
マイ・パスタ・キッチン 〜シェフに教わるお店のパスタレシピ〜
チッツィアの「手作りパスタ」と「豚ひき肉のカチョエペペ」
西小山[チッツィア]のばばかつえさんに教わる「手作りパスタ」と「豚ひき肉のカチョエぺぺ」
パスタと素敵な時間が過ごせるお店に、パスタの作り方を教えてもらう「マイ・パスタ・キッチン」。前回[クオーレ・フォルテ(Cuore Forte)]に続いて、品川区西小山[チッツィア(Cizia)]を訪れた。
ばばさんは、日本食やイタリアンレストランを手掛けるグループで経験を積んだ後、練馬のベーカリーカフェ[パーラー江古田]でパン作りを学んだ経歴を持つ。だから、[チッツィア]の店内に小さなパン工房が備わっていることや、小皿・温菜・メイン・パスタと豊富なフード、心地よく飲めるワイン他ドリンクが揃っていることには、すぐに納得できる。でもこのお店の魅力は、なんといっても、西小山という心地いい町になじむ空気感だ。ばばさんは、飲食業界に入る以前に立川の個人経営の映画館に勤めていたこともあったり、人が集まる場所を作るのが好きなんだと感じる。[チッツィア]で食事をすれば、そういったことがよくわかると思う。
ばばかつえさん
そんなばばさんは今回、パスタ(麺)から手作りするレシピを教えてくれた。上の写真みたいに、自分の手で伸ばしたりして作ってみた。それでは早速、順を追って作り方を見ていこう。
<手作りパスタ(麺)の材料>
・強力小麦粉 200g
・水 100cc
・塩 おまじない程度にちょこっと
・オリーブオイル 二回しくらい
使用する小麦粉は北海道産「はるゆたか」。パン作りに使われる、もちもちした食感が特徴の強力粉。国産小麦は、[富澤商店]や製菓材料が充実したスーパーで調達できるが、まずはふつうの強力粉で始めてみるのもOK
小麦粉200gとその半分の水100ccをそれぞれ計る。水をボウルの中に入れ、そこに小麦粉(少しずつ)、塩をちょこっと入れ、ヘラで混ぜ合わせていく。
「粉に水を入れるのもいいんですけど、私は水に粉を入れて静かに混ぜていくスタイル。粉に水を入れると手にいっぱいくっつくので!」
YouTubeで手作りパスタを検索すると、粉を火山のようにして真ん中に水(もしくは卵)を入れてオリーブオイルをかけながらまぜていくという方法が出てきて、本格的でいいなぁと思いつつちょっとスペース取るし散らかりそうだなぁなんて思っていた。でも、この方法はとても楽!
最初は50ccくらいの水からスタートして、残りを少しずつ加えて混ぜていく。オリーブオイルも二回し入れる。
一応「水 100cc」と記したが、ここは数字に捉われず感覚を優先、とのこと。
「イタリアに行った時、現地の友達のお母さんに『グラムで覚えるな』って言われたんです。『このくらいの硬さって覚えなさい』って。よく耳たぶくらいって言われるんですけど、本当にその感覚」
というわけで、生地がまとまってきたらヘラから手に切り替え、自分の耳たぶを触りながらちょうどいい硬さまで練っていく。生地がつるんとしてきたら、15分くらいそのまま休ませる。
この時間を使って具材の準備に取り掛かるのもOKだが、ここではパスタ完成までいってしまおう。
15分(いや話していたら20分くらい)後
さきほどよりも弾力が増した生地。指で押したときの返りが全然違う。もう少し練っていくと、赤ちゃんのほっぺたのようなつるんとした生地ができあがる。
ここからまな板に載せ、棒を使って生地を伸ばしていく。
適度に打ち粉をしながら、縦に横に伸ばしていく。それほど薄く伸ばそうと頑張らなくても大丈夫。
これくらいで、パスタ一本分に切る。そこからは自由に、手でも棒でも麺状になるように細長く伸ばすだけ。パンを作るより簡単、うどんよりも気軽。
くるくる伸ばしたり
叩いてみたり
ちょっと洒落てみたり
「そうそう、それでオッケー!」と盛り上げてくれるばばさんの言葉が嬉しい
かくしてできた手作りパスタがこちら。写真になるとかなりオモシロイ見た目だが、自分でやってみると楽しくて色々作りたくなる気持ちがわかるはず。太さどころか形からしてさまざまだが「茹でるときは浮かんだやつからあげて調整するから大丈夫」とのこと。ばばさんの言葉は常に心強い。
では、このパスタを使って「豚ひき肉のカチョエペペ」を作っていこう!
<豚ひき肉のカチョエペペの材料(みんなで4皿分)>
・新玉ねぎ 1個
・芽キャベツ 10個くらい
・豚ひき肉 200g
・エルブドプロバンス(などの乾燥ハーブ)3g
・塩 ひとつまみ
・ガーリックオイル(ガーリックみじん切りをオリーブオイルと混ぜておく、その場で混ぜてもOK) 大さじ1
・バター 20g
・肉醤(醤油でも) 大さじ1
・チーズ たっぷりお好みで
・胡椒 たっぷりお好みで*パスタを茹でる用のお湯も沸かしておく。舐めて塩っぱいと感じるくらいの塩を入れておく。
友だちと一緒に手作りパスタ、という設定で、今回たっぷり4人分作った。イタリアのお母さんのように「グラムで覚えるな」なので、一人分や二人文なら適量を探りながら作ることにしよう。ばばさんは「自分のパスタは具が多い。パスタと同じぐらい具を入れるんだよね!」と話す。チーズと胡椒のシンプルスタイルが基本のカチョエペペだが、野菜もお肉もたくさん食べれられるチッツィア流のカチョエペぺのレシピになっている。
まず、野菜の切り方。玉ねぎはざっくり、乱切りに近い切り方でいい。芽キャベツも半分にしたり、さらに半分にしたり。先ほどのパスタ作りと同じ自由なノリで切っていく。
ガーリックオイル、豚ひき肉+ハーブ・塩、玉ねぎ、芽キャベツを全てフライパンに入れる。「エルブドプロバンスを使っていますが、なければ別のハーブでも。それもなければ胡椒でも、ハーブティーや生姜とかでも。家にある調味料で大丈夫」。おおらかに、おおらかに。
それを強火にかける。ひき肉はヘラで潰すようにして、あえて焦げがつくくらいを目指して火を入れる。この方法もいいなと思う。肉の下にガーリックがあるのだが、上に肉があることで焦げることなく火が通っていく。肉の油、野菜の水分も出てくるので、全てがほどよく焼けていく。楽なのもある、でも何より、やってみてほしい。すごくいい香りが一気に上ってくるから。
「ちょっと焦げたくらいは旨みになるから大丈夫! ちょっと大きい塊くらいにお肉を崩したら、そこから一気に野菜と混ぜる。肉野菜炒めみたいに」
このあたりでパスタを茹で始める。生麺は早く、5分程度で茹で上がる。
具材の方は火を少し弱め、フライパンを二回し、三回し、ざっと混ぜる。そこに、具が浸かるくらいの茹で汁を入れ、火を強めに調整しながら煮込んでいく。
そこにバター、肉醤を入れる。茹で上がったパスタを投入しさらに“煮込む”。
「とあるシェフに『パスタは煮込みだ』って教えてもらったことがあるんです。和えるんじゃなくて煮込むんだよって。茹で時間も気にしすぎず、硬めであげてスープで茹でる感じ」
味を見て、パスタの具合を見たら、オリーブオイルを入れて乳化を促す。フライパンも重いので無理にあおる必要はない。そして、盛り付けへ。
パルミジャーノ・レッジャーノ、胡椒をたっぷりとかける。
完成! チーズと胡椒の香りが立ってくる。お肉と野菜の甘い、優しい香りも漂う。
手作りパスタのススメ
パスタを手作りするというからやや身構えていたところがあったが、びっくりするほど気軽にできる。もちろん、麺の太さをちゃんと作りたければパスタマシーンも必要になってくるわけだが、今回はそんな手作りパスタの入口としてこの上ない体験をさせてもらった。
[チッツィア]のパスタは普段、手作りのパスタ“ではない”のだが、ばばさんはみんなで楽しむ体験を大事にしている。そのきっかけはコロナ禍。お店がオープンしたのは2019年11月で、ほどなく営業できない期間がやってきた。
「コロナ禍で料理リレーの投稿が回ってきたときに、子どもでも作れる手作りパスタを紹介したんです。それを、今でも作ってくれている方がいるんです。一度だけ卒業シーズンに、常連さんのお子さんたちが集まって今日みたいに手作りのパスタをやったんです。最初はふつうに棒状に作ってたけど、だんだん頭とか胴体とか、すごかったのは北海道を作った子もいて! 思い思いの形で自由にパスタを作ってもらったことがありました」
厳しい時期だったはずだが、そんなコミュニケーションがこの店を地域に根付かせるきっかけにもなったはず。自由でいい、みんなで楽しめた方がいい、シンプルでおいしい。その感覚は[チッツィア]をよく表していると思う。
お腹も心も満たされて、西小山を後にした。ばばさん、パスタ手作りしてみます! ありがとうございました!
🍝「豚ひき肉のカチョエペペ」レシピまとめ
1. 野菜を切る。この日は新玉ねぎと芽キャベツ。乱切りのようにざっくざっくと切ることで仕上がりの食感も楽しくなる。(ガーリックオイルを仕込んでいなければガーリックとみじん切りにしておく)
2. フライパンに、オリーブオイル、ガーリック、豚ひき肉(かたまりのまま)、切った野菜をいっぺんに入れる。ひき肉の上にハーブと塩を適量振る。
3. フライパンを強火にかける。ひき肉は上からヘラで押さえながら、しっかり焼き目を入れる。
4. 具材にしっかり焼き色が付いてきたら、ひき肉を粗めに崩す。火が通ったら弱火にして、全体を混ぜ合わせる。
5. パスタを茹で始める。(乾麺の場合は3くらいで茹で始めていい)
6. 具材が浸かるくらいの茹で汁をフライパンに入れて煮込む。そこにバター、肉醤を入れる。茹で上がったパスタを入れて、さらに煮込む。
7. 味を見たら、オリーブオイルを入れて乳化を促す。
8. 盛り付ける。仕上げに、パルミジャーノ・チーズ、胡椒をたっぷりかける。
チッツィア|Cizia
東京都品川区小山6-6-3(Google Maps)
ランチ営業日時はインスタグラムに投稿
ディナー 18:00〜23:00(L.O 22:00)
火曜定休+不定休
Tel 03-6314-3965
IG @cizia_nishikoyamaPhoto by Daikichi Kawazumi(写真・映像 河澄大吉) IG @daikichi_kawazumi
Text & Edit by Yoshiki Tatezaki(編集・文 舘﨑芳貴)