ごちそうさまのお皿
その趣味は、ある日突然はじまりました
もしかして、これ、私にやっとできた趣味かもしれない。
食べ終わった食事のお皿を撮っています。ごちそうさま!って言いながら。
その趣味はある日突然はじまりました。
2015.6.10 松江
〜前略〜
熊野大社、素敵だったな。
出雲でも松江でもストーリーあふれる美味しいものに巡り会えた。
最後は松江。川沿いの鰻屋さん「いづも屋」さんで鰻丼を食べた。
丼!は久しぶり。普通は重ばっかりだから。
食べ終わったあとのどんぶりに描かれた箸の痕、
夢中でごはんをかき集めた箸の痕がサイ・トゥオンブリーみたいだと
ひとり悦に入って写真を撮った。
《ごちそうさまのお皿》日記が始まった。
家に帰ってから撮った写真を見ていたら、一言二言添えたくなったのだ。空のお皿を眺めているといろんなことが頭をよぎり、エピソードをいっぱい盛りたくなるから不思議。日記を書けない私がなんだか書ける。
それにしてもサイ・トゥオンブリー。私とは抜群の縁だったなあ。笑。2015年がはじまった頃、この素晴らしい芸術家のことを知り、色もタッチも全部が好きなセンスで、なんで今まで知らなかったんだーって悔しがっていたら、その年の5月に日本で初めて彼の展覧会が催されるというニュースが飛び込んできたのだった。実物の絵は画集で見た印象よりずっと美味しそうで(食べ物を描いてる訳じゃないけど)ますます私の意識にサイ・トゥオンブリーが刻まれて、どんぶりに残った箸跡がエッチング版画の習作みたいに見えてしまったって感じでしょうか。トンブリからどんぶり。笑。
さらに翌年の4月にも彼の大きな展覧会が川村記念美術館であり、その時に手に入れた図録を部屋に飾っていたら、たまたま食事にいらした後のRiCE編集長(創刊前だったから)がそれを見つけて、サイ・トゥオンブリーいいですよねという話から、ごちそうさまのお皿の話になり、撮りためた写真を調子に乗って見てもらっているうちに、なんとRiCE創刊号の裏表紙を飾らせてもらうことになったのだった。
2015.7.22 青山
めったにない、ほとんどない、ちゃんとしたフレンチレストランでランチ。美味しいラムをと誘われて。切り分けたラムチョップは綺麗なローズ色で完璧な火入れ、品よく美味しかった。けど、私は初めから切り分けた状態で全面焼いたほうがが好きなんだなってはっきりと認識できた日。右端には赤ワインの影。美味しいものはもっと美味しいものに気づかせてくれる。
2015.8.1 富士見
富士見会。今年でもう4年目。みんなで収穫した野菜を使って、私がひたすら料理して一緒に食べるという、いわば合宿。2日目の朝、隣の家からもらったというたくさんのブルーベリーにあがる。チーズととうもろこしのオムレツのソースに。山のように採ってきたパクチーの花を贅沢に盛った。
ぜいたくゼイタクぜいたくー。ひと枝、残してるーって、今頃くやんでる。
なくなって気づくことっていっぱいあるよね。
このお皿の直径、30cmはあったはず。使った卵は8個。
2015.8.1 富士見
夜。収穫した酸っぱいプルーンとまだまだあるブルーベリーと
地元産のクリームチーズを使った甘くないチーズケーキみたいなものを作った。まわりにまぶしつけたあたり胡麻との相性がよく、とても好きな味になった。
そしてとても好きな「ごち皿」になった。(まだまだトゥオンブリー!)
2015.吉日 千駄ヶ谷〜豊島
とうとうもろにサイ・トゥオンブリー作戦。
誰が食べても、食べ終わったお皿がサイ・トゥオンブリーになるという料理を作っちゃった。楽しかったなー。みんなも楽しそうだった。野菜を駆使して虹のような8種類のソースを用意した。スモーク豚や海老の唐揚げを好きなソースで食べてるうちにあっちでもこっちでもトゥオンブリー。もう満足。笑。
2015.9.3 上野毛
雑誌の撮影、秋の味覚。私は菊が大好きで、その季節になると使いまくる。基本はおひたし。そこから出発してどこへでも。これは海老だんごを黄色と紫色の菊であんかけに。
撮影はそのあとの実食タイムが一番好き。いっしょに食べられるし、見た目以上に食べて美味しいことにスタッフのみんなが歓声をあげてくれるから。微妙な歪みがいいなあ、このお皿。シエナからやってきました。
2015.7.12 福島
初めての福島は民家園で開催された《FOR座REST》というイベント。
2日目のお昼は地元で評判の「夢や」さんのカレーべんとうを。
よくばって3種盛り!
テントから透けて届く太陽の光のせいで
味気ない黒いプラスティックの容器にも初夏の匂いが降り注いだ。
お腹いっぱいで残してしまったターメリックライスがいい味だしてるな。
(わざと残して写真を撮ったりはしないのが「ごち皿」の基本)
そして今はもう2018年。もうしばらくの間、
ごち皿アーカイブを見てもらいつつ、
カレーを食べ終わったあとのお皿特集や、
麺をすすったあとのどんぶり特集などまじえながら、
「今日」に追いついていけたらいいな。
楽しんでもらえるかな、みんなにも!
武蔵野美術大学・視覚デザイン学科卒業後、フリーランスのコピーライターに。広告CF製作、作詞を主に手がける。15年経って、この仕事は自分に向いていないし才能もないなと気づき、辞めることを決心。料理の道をいくことに。料理自主トレの後、1993年、世田谷代沢に東京料理『タケハーナ』をオープン。瞬く間の18年が過ぎ、2011年大晦日、最後のおせちを手渡して閉店、以後、食べてくれる人とさらに密接で、自由な料理人をめざして現在に至る。
ホームページ『お料理ちゃん』
http://takehanaichiko.com/
- TAGS