流れる時間も味わえる蕎麦屋たち

常連さんが行き交う 街の蕎麦屋 一仁


RiCE.pressRiCE.press  / Jun 8, 2019

千歳船橋駅から徒歩3分の場所に立地している[ 一仁 ]。藍色の暖簾がかかった玄関先と店内の落ち着いた佇まいが、昔ながらの蕎麦屋を思わせる。

店主の長谷川等さんは、元々荻窪の[ 本むら庵 ]で修行をされていた。独立した今でも、修業先で教わったことをベースとした蕎麦を提供しているのだという。「どの蕎麦も美味しいとは思いますが、修行先で教わってきたような香りの立つ粗挽きの蕎麦を特に美味しいと思っています」と長谷川さん。確かに、[ 一仁 ]の蕎麦は、口に入れてよく噛むことで香りが鼻に抜けていくような上品な蕎麦だ。実は、この“粗挽き”を扱うのはなかなか難しい。普通の蕎麦に比べると切れやすく、短くなってしまうこともあるのだという。しかし、粗挽きでありつつ多くのお客さんが満足出来るような蕎麦を目指して長谷川さんは日々試行錯誤をされているのだそう。


せいろそば ¥650
季節のおつまみ6点盛り ¥1,200
※左上から時計回りに、ふぐ皮の煮こごり、蕎麦豆腐、卵焼き、ナマコ酢と大根おろし、菜の花の辛子和え、レバーのオイル漬け

「蕎麦に関しては、粉の配合を変えたりして、開店したばかりの頃とはだいぶ変わってきています。変えるたびに常連さんに食べていただき、素直な感想を聞いたりして。それを参考にしつつ、自分の中で納得のいく蕎麦を作るというのを課題にしていますね」

開店してから4 年、長谷川さんにこの店を続けている中での喜びを聞いてみると「蕎麦を食べて『美味しかった』とお客様からいってもらえるのはもちろん嬉しいですが、うちの店のことを気にかけてくれてくれる常連さんが増えてきて、この街に馴染んできたんだなと感じてありがたく思いますね」と答えてくれた。

自身のこだわりを軸にしつつ、来てくれるお客様への満足度も高める。そんな長谷川さんの広い視野を持って作る蕎麦だからこそ、店に何度も足を運んでしまうお客さんも多いのだろう。そしてまた、そのお客さんに支えられて[ 一 仁 ]は日々、より美味しい蕎麦に近づくためにアップデートし続けていくに違いない。

店内には、陽の光が入るテーブル席と落ち着いた明かりの座敷が用意されている。ガラス張りの個室を覗くと、蕎麦打ちのための道具が。ここで店主の長谷川さんが、仕込み時間に蕎麦を打っているのだそう。

一仁
東京都世田谷区桜丘2‐26‐11
11:30~14:30 (L.O.14:00) 17:30~21:30(L.O.21:00)
日曜定休(毎月連休有り)
Tel 03-5799-6517
http://r.goope.jp/soba-itijin

撮影 岩澤高雄 、文 笹渕りり子

当記事はRiCE No.10「蕎麦の新作法」の記事をWEBサイト用に再編集しています。
RiCE No.10の内容を見る。

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