おいしい裏話
「裏話 つぐみ」 ( RiCE No.11 ) に寄せて
私の小説が原作の映画「つぐみ」でヒロインを演じた牧瀬里穂ちゃんと、たまに天ぷらを食べに行く。 共通の友だちと3人で、マダムランチというライングループを作って、お昼ごはんを食べて解散するだけの潔い会だ。 里穂ちゃんは食べ方がきれいで、おしゃべりしていても決して職人さんへの敬意を失わない。私と全く同じ考えで、天ぷらは家では食べないそうだ。 女が3人寄ればかしましくなるのはしかたなく、ひとりでいらしている粋なおじさまが、「今日はにぎやかだよなあ」と店主につぶやいてしまうほど、やっぱりおしゃべりはしてしまうのだけれど、3人とも天ぷらが来るとやはりキリッとして、写真を撮りたい場合は一瞬で撮って、もくもくと食べ始める。 彼女がまだ十代、私が二十代で出会ったときは、まさかこんなふうに天ぷらでまた結ばれるとは思っていなかったなあ。
この裏話に出てくるお店: みかわ 六本木ヒルズ店 住所:東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り レジデンスB棟 3F 電話:03-3423-8100 https://www.roppongihills.com/shops_restaurants/restaurants/00154.html
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『下町サイキック』がある。
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