映画『南瓜とマヨネーズ』特別対談
臼田あさ美 × 川島小鳥
映画『南瓜とマヨネーズ』に主演する女優・臼田あさ美と映画のスチール撮影を担当した写真家・川島小鳥。ふたりの特別対談がRiCE最新号のファッション撮影終了後に実現した。旧知の間柄であるふたりだからこそ語られた、今作の魅力や撮影エピソード、そして日本酒の話まで————。
————今回、映画のスチール撮影を小鳥さんにお願いするというのは、臼田さんのアイデアだったそうですね。
臼田 『南瓜とマヨネーズ』は原作があってしっかりファンの方もいらっしゃる作品なので、その世界観を写真でも表現してくれるひとがいいなと思ったんです。それでプロデューサーの甲斐(真樹)さんと相談をしている中で「小鳥さんが撮ってくれたら最高だよね」って話になって。でも小鳥さんのイメージとして、がっつり現場に入って撮影してるっていうイメージがないから。最初はポスターだけお願いする?とかっていう話をしたんですけど、やっぱりお願いできるところまではお願いしたいよねって。それは私だけじゃなくて、太賀くんもそう思ってたし。そこからは制作チームが小鳥さんのスケジュールを調整して決めてもらったんですけど。ずっとほぼ毎日、現場にべったりいてくれて、そんなことは奇跡だったなって思います。
————それは奇跡ですよね。いま日本で一番忙しいカメラマンのひとりですから。
川島 いえいえ。全然そんなことないですよ!(笑)。ぼくも3〜4年前から話を聞いていたので。 臼田 そうなんです。この漫画を映画でやれるかもみたいな話はしてて。 川島 あさ美ちゃんにとってすごい大事な作品だっていうことは聞いていたし、ぼくも学生の頃から魚喃キリコさんの作品が好きだったのでぜひやりたいなと思っていました。
————映画のスチールを撮るのは初めてだったんですよね?
川島 初めてでした。すごい勉強になりました。映像の邪魔にならないように撮らなきゃいけないので、ムービーの人にも協力していただいたり。あさ美ちゃんにも助けてもらったし。タイミングとかいろいろ教えてもらって。最初は戸惑ったこともあったんですけど、だんだん慣れてきて最後は大満足みたいな(笑)。 臼田 一番近くで、一番客観的に見てるみたいな(笑)。でも役者もスタッフの方たちもみんな仲間だっていう一体感はすごかったよね。それは小鳥さんが映画にべったり入るっていうことが初めてだったから、助監督も「小鳥さんが撮りたいタイミングあったら言ってください!」って気を使ってくれたり。映像に集中する時間、写真に集中する時間ってちゃんとメリハリもあったから。役の気持ちが途切れない感覚で写真も撮られてるから不思議な感じでした。
————小鳥さん的にも普段の臼田さんを撮ってる感じと、役に入ってる臼田さんを撮るのでは違いましたか?
川島 全然違いましたね。役のツチダにしか見えなかったんですけど、どこかあさ美ちゃんでもあって。それがすごい不思議でした。 臼田 「あさ美ちゃん、いまツチダだったよ」ってよく言われました(笑)。でもそうやって客観的に見てくれるひとが近くにいてくれたのは心強かったです。それは太賀くんもそうだったと思います。
————小鳥さんは太賀くんも撮ってますもんね。写真集とか。あれは映画の前だったんですか?
川島 ちょうど挟んでたんですけど、せいちゃん(太賀が演じた役「せいいち」のこと)の時期の太賀くんはとても嫌いで(笑)。ぼくは完全にツチダ派だったので。ツチダにすごい感情移入しすぎてて、一緒に泣いたりしてました(笑)。 臼田 実は私はツチダよりもせいちゃんをやりたかったなって思ったりもして(笑)。それは、ツチダのやってることに共感するっていうよりも、せいちゃんを何とかしてあげたいんだ!っていう気持ちが、やっぱりすごい強かったなって。撮ってる最中もずっとそう思ってたし、「せいちゃん、いい歌うたえるのに、いい曲作れるのに。なんで!」って。だんだんツチダよりもせいちゃんのことの方がよくわかっているのかもって(笑)。
————小鳥さんは完成した作品を見てどうでしたか?
川島 めっちゃ良かったです。現場に毎日いたから撮ってる過程とかも全部知ってるんですけど、カメラワークを現場で見るのと映画で見るのは全然違うんだなと思いました。本当にすごいなと思いましたし。あとは、あさ美ちゃんがすごく良かったです。 臼田 感想くれたんですけど、携帯開いたらLINEが10件以上になってて、 全部小鳥さんからで。えっ!と思って開いたら、スタンプで全部感想が表現されていて(笑)。最初うるうるみたいなのがあって、フワッみたいなのがあったり、そこからだんだん怒りに変わってくんですよ。あ、それはせいちゃんに対してだなって思って。それで最後は号泣!みたいな。スタンプの流れで感想をもらったんです。それで十分伝わりました(笑)。 川島 なんか良かったねーと思って。 臼田 本当?よかった! 川島 いい作品に出会えるかってとても大事だと思うから、本当にいい作品だから出られてよかったねと(拍手)。 臼田 そうだね。いいチームでね。『南瓜とマヨネーズ』っていう原作の力が強いから、映画化するってことは魚喃さんがOKすればたぶんやりたいひとはいっぱいいただろうけど、こんなにこの作品に愛情を持ってくれるひとが集まれたことはすごいことだと思います。小鳥さんがスチールに入ってくれたこともそうだし。そう思ったら悪いわけないじゃん!っていう気もしてくる。
————ハギオ役のオダギリ(ジョー)さんもすごく説得力のある演技でした。
臼田 スケジュールの都合もあって、せいちゃん部分とハギオ部分の撮影が前半と後半で分かれていて。先にせいちゃんとのシーンを撮影したんですが、ハギオとの撮影もすごかったです。本当に。それまで、せいちゃんとずっと撮影してるから、情もあるし、むかつくけどせいちゃんとなんとかしたいなっていう気持ちはどんどん芽生えるし。ハギオは来なくても、、、。 みたいな気持ちもあったんですけど(笑)。オダギリさんが現れた瞬間に「ハギオだ!」って。男女問わずひとを惹きつける力を持っていて、力が入ってないのに色気があって、ハギオに絶対NOって言おうっていう気持ちでいるのに、あれよあれよとYESと言ってしまう感覚とか。そういうのがオダギリさんにあった瞬間にストンと落ちて。「せいちゃん負けたね」って速攻で思いました(笑)。
————小鳥さんもオダギリさんは初めてだったんですか?
川島 初めてでした。ぼくも、ちょっと来ないでくださいって思ってたんですけど。せいちゃんが好きだったので(笑) 臼田 そう。みんなせいちゃんにそうなってたよね(笑)。 川島 せいちゃん負けるなって思っていたのに、全員一瞬でハギオのこと好きになってました(笑)。せいちゃんはどうでもいいと。でもオダギリさんが帰ったら、やっぱり、せいちゃんに会いたいなってなりました。 臼田 本当にそう。 川島 輝きがすごかったです。 臼田 すごかったね〜。
————ちょっとそれますが、おふたりは日本酒を飲んだりしますか?
臼田 日本酒好きなんですけど、詳しくないから何を飲んだら良いのかいつもわからなくて。美味しいお店もあまり知らないから知りたいなって思っていたところでした。 川島 ぼくも展覧会や撮影で地方に行くことが多いんですが、その土地の日本酒を買って帰ったりしています。仲の良い人が蔵で働いてたり、取材で酒造に行くこともあります。家ではあまり飲まなくて、お店で飲むことが多いですね。今回の撮影でお店を知れて良かったです。
————打ち上げもあったんですか?
臼田 はい。クランクアップの3日後くらいに。 川島 せいちゃんが歌ったんだよね。 臼田 そうそう。映画のなかの曲とオリジナルを。 川島 実際にせいちゃんとして曲を作っていたみたいなんです。それが撮影中には完成してなかったみたいで。それで打ち上げの時に歌ってくれたんです。 臼田 これどこにも言ってないね。世には出ないと思うけど。 川島 思い出としてだね。幻だったのかも(笑)。
————それはすごい貴重ですね。では最後に小鳥さんに『南瓜とマヨネーズ』と「日本酒」というテーマで、締めていただければ。
川島 え!お酒でですか(笑)。(小鳥さん考え中)
————ではその間に、臼田さんみどころを(笑)。
臼田 見た人がどう思うかは本当に自由なのでなんとも言えないんですけど。いま普通に過ごしている日常がいかにキラキラしているかっていうことを考えさせられる映画になっていると思うので、なんてことなかった毎日がどれだけ大事だったかって感じられる。そんな気持ちになれる映画だと思います。
————ありがとうございます!
川島 思いつきましたよ! 臼田 ちゃんと考えてたんだ!えらい!(笑) 川島 日本酒と日本映画じゃないですか。だから、いいよねっていう(笑)。 臼田 えっ!(笑)。 川島 ぼくは日本映画の現状にそんなに詳しいわけではないのですが…。『南瓜とマヨネーズ』はすごい製作費がかかっているような大作映画ではないのだけれど、キャスト・スタッフみなさんの力で、とても愛情を込めて作られています。こんなにピュアに作品として素晴らしいものができたっていうことにとても感動しました。だから職人の人たちが丹精込めて作る日本酒も同じだし、日本酒も映画も両方同じように味わって欲しいと思います! 臼田 本当にそう思う。整ったね(笑)。完璧です!(拍手)
臼田あさ美 1984年千葉県出身。モデルとして活動後、女優デビュー。映画『色即ぜねれいしょん』(2009)でヒロイン役、『ランブリングハート』(2010)で映画初主演を果たす。『南瓜とマヨネーズ』では、曲が書けないスランプに陥ったミュージシャンの恋人と、自由奔放で女好きの昔の恋人とのはざまで揺れ動く女性・ツチダを演じる。 川島小鳥 1980年生まれ。写真家。早稲田大学第一文学部仏文科卒業後、沼田元氣氏に師事。代表作に『未来ちゃん』(2011)、『明星』(2014)など。『南瓜とマヨネーズ』に出演した臼田あさ美の写真集『みつあみ』(2016/藤田一浩、奥山由之との共書)、太賀との私家版写真集『道』(2017)なども撮影。
『南瓜とマヨネーズ』 11月11日(土)より全国ロードショー http://kabomayo.com
©︎魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会
<衣装クレジット> – (メイン写真) dress ¥29,000 / COSMIC WONDER(Lamp harajuku 03-5411-1230) – (写真上から1番目) sweat top ¥23,000 / zaziquo(info@zazizazizazi.com) velvet pants ¥77,000 / Jupe BY JACKIE(Lamp harajuku 03-5411-1230) beret of used ¥4,200(ハウス@ミキリハッシン03-3486-7673) – (写真上から2番目・3番目) tops ¥47,000 / Susan Cianciolo sweat top ¥59,000 / Jupe BY JACKIE(Lamp harajuku 03-5411-1230) skirt ¥23,000 / FUTATSUKUKURI(ハウス@ミキリハッシン 03-3486-7673) – (写真上から4番目・5番目) dress ¥19,000 / POTTO cardigan ¥25,000 / FUTATSUKUKURI(ハウス@ミキリハッシン 03-3486-7673) – その他スタイリスト私物
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