今日の私と台所
優しい野菜料理が食べたい今年の春
昨日の夜、夕暮れ時にどこかでカエルの鳴く声がした。
ほんの5分ぐらい。確かにあれはカエルの声だ。
初夏になればうるさいほど聞こえるであろうその鳴き声も、まだ少し肌寒い春の終わりに聞くと何だかウキウキしてしまう。星や月の動きはもちろん、四季のある日本は特に、農作業が季節に沿って流れていくから、周辺の作業や進度、とそこに住む動物たちの様子で、なんとなく今という時ががどんなフェーズなのかがわかる。
▲ 春分の日からどんどん移動する太陽の沈む位置と昼の長さ
そこかしこで歌のように春の小川がさらさら流れ、田んぼの準備が始まるのだ。あと1週間もすればすぐに田園に水が張られ、カエルたちも高らかに歌い出すだろうな。拠点のファームも種まきが進む。自分の食べたい野菜の、小さな新芽がなんとも可愛い。
▲ 種植え芽出し作業。この日はポップコーンを植えた(ジャンク笑)
さて、今年の春はstayhomeの影響もあり、本当に家でご飯を食べる機会が増えた。
1日に何度も料理を作っていると自然と使う食材もバライティー豊かになってくるというか、普段外食で食べていたようなものを自分で作らねばならなくなるから必然的に食材や調味料にも目がいく。こんな時、なかなか近くで手に入らない調味料の豊富なネットショップはとってもいいですね。最近下北に出来たらしい、ヒラクさんの発酵のお店にはまだ行けてないけど、オンラインで毎月発酵調味料が届くサブスクとかすごいいいなと思ったし、相変わらず、わざわざさんところのエラバレシ商品たちも、見ているだけで気持ちがいいです。
さて、食材の話。今年は春野菜とにかくたくさん使いましたー。こんな時だからと、普段は直接ショップに行っている新潟のそら野テラスからも野菜をお取り寄せ。完熟越後姫(いちご)も追加して、どれもこれもうまかったなー。
▲ そら野で頼んだ10種セットの野菜たち。お米、味噌、イチゴを追加。
そこで春野菜の話を。これは三角頭のキャベツです。スーパーにもどんどん出てきてた。ちょっと昔の人だと「そのキャベツは薹が立っていてもう硬いやつだ」とかいうかもしれないですが、これは『みさきキャベツ』ですね。たけのこ型の春キャベツの種類。
▲ 三角キャベツ、スーパーでも結構みるようになってきました。
葉離れ良く、芯まで柔らかく、火の通りも最高だから、ロールキャベツを何度も作りました。スタンダードのひき肉入りや豚バラを巻き込んだものまでどれもこれも美味かった。またソースや煮込みのスープの味でもバラエティ豊かに楽しめるから、いいですよね。トマトソースに和風スープ。コンソメで煮込んでホワイトソースをかけるのも好き。
▲ 巻いたり煮たり、手がかかるけども楽しい
ちなみに、ロール用には外側4枚ぐらいの大きな葉を剥いで、中華鍋で下ゆでするのがおすすめです。鍋の縁側をうまく使って、お湯を移動させながら葉っぱの外側までしっかり火入れしつつも、最終的に芯の部分をしっかり茹でる。さっと火が通ったら、平らな竹かごで水を切ってください。いやー、緑色が綺麗。
▲ 鍋を回して縁にお湯を這わせながら火入れ
▲ この日はトマトスープで煮込みロールキャベツ。
春だねぇ。
今年は近隣で拾ってきたり、直売所で大きな野菜を買う機会も多かったです。蕨にたけのこ、タラの芽やこごみなど山の幸。
▲ 取れた量はこんぐらい。これでも一食分しかないけどね…
▲ 灰がまさかこんなことに使えるなんて、忘れてた
そして、まさかのここでまた薪ストーブ生活が役に立つとは。これらのアク抜き作業に木灰が使えるんだねー。まさに冬の間の恩恵です。ワラビのアク抜きには灰と熱湯をかけておくだけ。たけのこのアク抜きも色々やってみる時間があったので、定番の米ぬかではなくはじめて別のやり方を検討することに。大根のおろし汁で灰汁を抜いてみました。これも米ぬかより個人的には風味がよかった気がするなー。
▲ 竹の子に力負けして、引っこ抜くとき顔面を地面に強打
せっかくなので、米ぬかを使う以外の、私流簡単な筍のアクの取り方をご紹介。
1. 皮をむけるだけ剥いてしまう(食べるとこ結構少ないのでびっくりしないで)
2. 使う大きさにカット(上下部分によって切り方で食感が違うので仕上がりを意識)
3. 大きめの鍋にタケノコがしっかり水に浸るまで水を入れ
4. 火にかけながら浮いてきたアクを丁寧におたまでとる(沸騰して10分ぐらい)
5. そのまま火を止め水を捨て、筍をざっと洗う
6. 冷ましている間に一本分ぐらいの大根おろしを作り、汁と大根に分ける(汁以外は山菜天ぷらに使いました)
7. 粗熱の取れた筍に大根のおろし汁をかけ、水、ふたつまみほどの塩を入れ混ぜる
(水分は、大根汁3:水1ぐらいがオススメ。浸かるぐらいかかっていればオッケー)
8. ラップを落としぶたのように軽くかけ、1、2時間冷蔵庫にて漬け込む
※これだと、一晩かからないでその日のうちに使えますが、保存は大根おろしごと冷蔵庫で1、2日ぐらい。少量ですぐ食べる用のやり方です。
※筍は下ゆで状態。まだ硬い可能性も。ここから火の通りを見ながら調理してください。
そのほかも野菜メニューが楽しかったし美味しかった。この時期ならではですがカブ、人参などの小さな間引き野菜や、菜花、川流れなど冬菜系も美味しかった。天ぷらしたり、サラダや煮物、筍ご飯に、ワラビの塩麹漬け、小さな人参やブロッコリーもいっぱい食べました。柔らかく甘く、こんなにざわざわした世間の様子と相対する、優しい味がとにかく心に染みた。
▲ わらび完成系。塩麹できゅうりと即席漬け
▲ ブロッコリーはアボカドと黒オリーブで温サラダ
▲ たけのこご飯の食材はすくった時全部の具材がはしにのる大きさが好き
いやあ、野菜料理は難しいけどやっぱり楽しい。こんな風に時間がある時は特に、下ごしらえの作業にさえ豊かさを感じるねぇ。
次は、夏。これまたいっぱい採れ始めると、使う方が持久走みたいになってくる夏野菜の料理もなんだか今から楽しみです。
- Planning Director
山倉 あゆみ / Ayumi Yamakura
Sync board Inc.代表取締役/プランニングディレクター
ローカルプロジェクトを中心に活動するSync board Inc.代表取締役。個人/地域/企業/行政/団体と様々な人々と協働しながら、料理人経験を生かした食農プランナーとしてケータリング、キッチンカー、古民家レストラン、公共施設の飲食店など、地域創生伴走型のコンサルティング事業を展開する。現在は、新潟、渋谷、淡路、京都など多拠点を行き来しながら食空間を楽しむ仕組みを各地で立ち上げ続けている。
三条スパイス研究所
http://spicelabo.net
岩室温泉灯りの食邸 KOKAJIYA
http://kokajiya.com
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