エディターズノート
「RiCE」第14号「エシカルフード」特集に寄せて
2020年春のRiCEは、エシカルフードの特集です。創刊号から前号に至るま で、食材や料理、飲み物にフォーカス してきましたが、今回はフード全般を「エシカル」というフィルターで捉え直すことにしました。
ではエシカルとは一体何なんでしょう? 英語で「倫理的」もしくは「道徳的」といった意味なのですが、近年、環境や社会へ配慮した活動やモノを形容する際に使われており、国連が2030年を期限とした17の社会目標を設定したSDGs(Sustainable Development Goals = 持続可能な開発目標)の中で目指されているゴールとも大いにリンクしています。
例えば、ターゲット14の「海の豊かさを守ろう」。水産資源の枯渇が叫ばれて久しいですが、このままのペースで魚の乱獲を続けていけば、2048年には世界の漁業が消滅しているだろうという研究者もいます。まさかそこまでのレベルで危機が差し迫っているということは、なかなか実感しづらいでしょう。スーパーマーケットの鮮魚売り場に行けばいつだっていろんな魚が手に入るし、それこそ豊洲から毎日大量の魚が全国に送り届けられていますから。
この課題ともリンクしているのがターゲット12の「つくる責任、つかう責任」に含まれるフードロスの問題です。現在、日本では国内向けに出荷した食品のうち約1/3が廃棄されているとのこと。この問題は明らかにターゲット1〜3「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」と直結しているでしょう。魚以外 にもきっと食べきれずに大量の食品が廃棄されて いるはずで、これはターゲット15の「陸の豊かさも守ろう」にも繋がってきます。
ことほど左様に全ての要素はお互いに関係し合っているし、それぞれの専門領域だけでは何も解決しません。「このままでは地球がもたない」という共通する危機意識の元、大きなムーブメントが起きようとしています。生きている限り日々食べ続けるしかない人類として、何を食べるか?を主体的に選び取ることは、いかに生きるか?をエシカルに規定します。
ところで、今この原稿を書いているのは2020年4月頭、新型コロナの影響で先の見えない大変な状況になってきました。エシカルフードの特集を決めた時にはまさか予見しておりませんでし たが、コンテンツの柱の一つであるアニマルウェルフェア(動物福祉)とも大いに関連しています。鳥インフルエンザや豚インフルエンザなど近年のパンデミックが畜産動物から発生しているのは紛れもない事実。非衛生的な狭い空間での動物の大量飼育は、新たなウイルス株を培養するのに最適な環境なのです。
思うに、我々人類だけでなくあらゆる生物は、地球という同じ丸い惑星で共存しています。その限りにおいて、全てどこかで繋がっているはず。 出来るだけ早期にコロナが収束することを祈ってやみませんが、立ち止まって考える時間をもらえたとも取れるでしょう。これから我々が、いかに食べて生きていくかを。
「RiCE」編集長 稲田浩
当記事は、RiCE No.14「エシカルフード・カタログ」収録ページをWEBサイト用に再編集しています。
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Illustration: Masakatsu Shimoda
- RiCE.press Editor in Chief
稲田 浩 / Hiroshi Inada
「RiCE」「RiCE.press」編集長。ライスプレス代表。
ロッキング・オンでの勤続10年を経て、2004年ファッションカルチャー誌「EYESCREAM」を創刊。2016年4月、12周年記念号をもって「EYESCREAM」編集長を退任、ライスプレス株式会社を設立。同年10月にフードカルチャー誌「RiCE」を創刊。2018年1月よりウェブメディア「RiCE.press」をロンチ。