一期一食
011. 里山の恵みをいただきながら自分を確かめる
家でご飯を作り、不要不急の外出を控えていますが、この日だけはどうしてもお店に行かせていただきました。毎年必ず行っているNARISAWAさんへ。この日があるから僕は頑張り続けられているといってもいいくらい大事な日です。
初めて訪れたのは2005年25歳のとき。自分が何者でもないくらい若いとき(今も変わらないけど)、写真が綺麗で定期購読していた雑誌の特集を見て、なんて素敵なお店なんだろうと完全に背伸びして行ったのが最初です。本当に懐かしい。決して大きな特集ではなかったんですが、すごく気になって。
お店に入ると、あれだけ長く経ったとは思えないくらいキレイな空間で、初めてここに入ったときの気持ちにいつもさせてくれます。そんな場所があるだけで幸せだよ。
成澤さんがSATOYAMA CUISINEと自らの料理を表現されてからもう長く経ちますが、昨今のサステイナビリティ、パーマカルチャー、エシカルなどの環境や自然への配慮のような言葉が世の中の中心にないときから、自然(「じねん」と読む方がいいかも)の考え方で料理を作られていた先駆者ですよね。むしろ、こういう流れを作ってきた方でした。失礼しました。
昨今の食の流れ(RiCEの最新号もテーマは「エシカル」)も、僕は運良く無理なく身体に取り入れることが出来ていたのかもしれません。旅も多く地域に行くことも多かったし、その地の人と一緒にお酒を飲んだり泊めてもらったり、みたいな体験をしてきたことも大きいのかもしれない。堅苦しく捉える必要もないんですよね。毎日続かないと何の意味もない。人間そんなにキレイでもないっていうのも、いつもどこかで思ってる。こういう仕事をしているから尚更だ。面倒なときは楽もする。毎日優雅に生きられるほど余裕もない。周りにもいいことも辛いことも日々起きる。唯一変えられるのは自分のこと。丁寧にセルフマネジメントすることはできるはず。自分という存在がどのようなものに支えられて、生きているのかを考えて生きることがいいなと思っているだけです。茶道に通じるところもたくさんありますね。このくらいにして…
音楽を聴いてアーティストの気持ちが伝わるように、お皿を全身でフラットな気持ちでいただけば、風景が見えてくるし、気持ちもわかる。そういう料理を食べに行くのが僕はやっぱり大好きだ。一期一食の瞬間です。お鮨のような呼応し合うライヴもあれば、コースで哲学に触れることももちろん大好き。長く通う間に僕も育てられたのかもしれない(と一方的に思っているだけ)。常にどのようなことからも自分の学びにしていくしかないですよね。洞察の積み重ねで解像度を上げていけるといいなといつも思っています。
料理の話を。
毎年春の時期に行くのでこの料理を見ると、「あぁ、今年も頑張って来ることが出来た」と思う稚鮎のお皿。
手でつまんでいただきます。成澤さんのコースは、手で食べる料理が結構あり、生命をダイレクトに感じられるこの感覚が僕は好き。
ペアリングでお酒もいただきますが、日本酒や国産ワインのいいものを柔軟に、いち早く取り入れられて、そういう世界を広げられることは本当にカッコいいなと思います。毎回、美味しすぎて飲みすぎてしまうんですが…。中村勘三郎さんの「型があるから型破り、型がなければ形無し」の言葉はとても大切にしている大好きな言葉。
パンは石鍋を使ってテーブルで焼かれたものをいただききます。藻を模したバターもかわいい。
その他の料理も、和を感じるお皿が続きます。語るよりも見て欲しい笑
蛤のお料理
野菜で丁寧に仕上げられた十二単のお椀
あたたかいお鮨も(金沢の太平寿しもまた行きたいな)
魚を揚げたものも手で食べる
メインのお料理も
はぁ、と食べながら胸一杯に多幸感。最後は、ブラッドオレンジの器に入ったデザートも。焙じ茶が敷かれています。焙じ茶の香りには幸福度を1200倍にする研究結果もあるのだとか。いやいや、もうすでに幸せに十分包まれてます…。幸せのアンサンブル。
いつもは最後にフレッシュバーブティをいただくのですが、お抹茶があるとのことでお抹茶を。ビシッと締まりました。器が木でできていました。素敵だ。
まだ載せていない料理の写真もあります。本当に楽しい時間でした。
正直、今でも背伸びしているお店なのかもしれない。きっと、そうだ。
しかし、続けたことが自分のプライドになってもいる。
自分なんてちっぽけだって、そんなことはとうの昔から知っている。しかし、下ばかり向いているのもおかしい。
また来年、行けるように頑張ります。
- Bassist
濱田 織人 / Orito Hamada
ベーシスト、音楽プロデューサー、クリエイティブディレクター、NPO法人SOMA副代表理事、アトリエリスタ、茶道家。芸術修士(MFA)。スタジオミュージシャンとして演奏活動しながら、作編曲、作詞、プロデュースと幅広く活動。2017年クリエーティブブティック創業後、活動範囲を音楽以外にも拡大し、芸術教育などにも力を入れ始め、NPO運営にも携わる。日本唯一のベースの専門誌ベース・マガジンにて連載経験あり。プライベートでは、裏千家茶道家として初音庵主宰。密かに楽しんでいたサウナの魅力をゆるやかに発信中。サウナ・スパプロフェッショナル。 https://www.instagram.com/oritosroom/
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