Food loss +
眉間にしわ寄せない、フードロス論。
そんなに眉間にしわ寄せないで、フードロスについて、もっとたのしく考えよう。
いきなり教科書みたいな話で申し訳ないけど、food lossとfood wasteという言葉がある。food lossは、食べものの量的減少、質的減少を指す。質的減少は「栄養」「価値」「安全性」などが損なわれること。人参がしわしわに萎んだから捨てるのは、food lossだ。
一方、food wasteはfood lossの一部で、食べられるのに捨てるものを指す。お店で注文した料理の食べ残しなどがそれだ。ただ、lossとwasteの分類は明確でもないので、ここではフードロス=「lossとwasteの総称」の意味で書いていこうと思う。
あぁ、フードロスってややこしい。言葉の定義もそうだし、調べれば調べるほど、この問題の複雑さにおどろく。「生産と消費」「環境」「孤食」「人口増加」など、あげたらきりがない言葉たちが、複雑に絡みあっている。
誰かが「フードロスを無くそう!」と呼びかけても、それが「これはやっちゃダメ!」「これを知っておけ」「こっちも忘れるな」と一方的に押しつけてくる説得になると、複雑さも抱えているものだから、何をして良いかわからなくて、ヤル気が起きづらい。
本当は自ら歩み寄って、フードロスやその周りの流れを理解できてこそ、人は納得して行動を起こせる。だからこそ眉間にしわ寄せずに、フードロスに対しては、もっとたのしくポジティブに考える方がいいハズだ。このことはかなり本気で思っている。
▲ 中央防波堤埋立処分場で、ごみの捨て方を学ぶ小学生たち
「野菜を漬けるのが趣味なんですよ」とか、「もうすぐ春キャベツが出るね」とか、目の前の食をたのしむことからでいい。たのしくないと、人は興味をもちづらい。フードロスに対しても「まじめにたのしむ」のだ。
実際、音楽にのりながら、集めた廃棄対象の食材を調理する「ディスコスープ」や、「現代版の食べものおすそわけ」と呼べるようなアプリサービスが増えてきている。どれも、食の魅力と美味しさを同時に体験し、ワクワクできる。
▲ サルベージ・パーティでは、料理のたのしみ方を体験
ぼくたちがプロデュースしている「サルベージ・パーティ」も、主婦、学生、お父さんとこども、学校の先生など、いろいろな立場の人たちに全国で参加してもらっている。
▲ サルパ恒例、プロのシェフによる食材の解説
こういった広がりと参加する人たちの笑顔が、「フードロスをたのしく考えることの必要さ」を物語っている気がする。
- Food Producer
平井 巧 / Satoshi Hirai
foodskole校長/株式会社honshoku代表/一般社団法人フードサルベージ代表理事 1979年東京都生まれ。新潟大学理学部卒業。広告代理店での企画営業を経て独立。「サルベージ・パーティ®︎」を中心に企業・行政のfoodloss&waste にまつわる課題解決を手がける一般社団法人フードサルベージを設立。食のクリエイティブチーム株式会社honshokuでは、「食卓に愉快な風を。」をキーワードに、食にまつわるコンテンツ運営、クリエイティブ制作、プロデュース等を行う。2020年より食の学び舎「foodskole(フードスコーレ)」を開校。 https://www.honshoku.com/