香り 薫る 馨れ
香水の街グラース。
初めて香水を付けたのは中学の頃。小さい頃から香りのものに興味があり、香水を付けるのもごく自然な事でした。最初に選んだものは『スカルプチュアオム』。当時何気なくつけていましたが、香りのノートを調べてみるとベルガモット、オレンジフラワー、トンカビーン、バニラと、やはり自分の好きな香りを選んでいたことに驚きます。
料理の仕事を始めてからは休日しか香水は付けませんが、香りを纏う時は特別感があり、なりたい自分に近づくような感覚と高揚感に包まれます。フランス語のレッスンの時、フランス人と香水の話になりお互いに好きな香りについて盛り上がったこともありました。彼らは香りのものにとても敏感で、『自分の香り』というものを持っていたのです。
僕はフランスに料理の勉強に行きましたが、それとは別に大きな目標がありました。
▲ グラースの街にあるパルフュムリー (香水やアロマオイルなど香りの物を扱うお店)
香水の街グラースへ行く。
フランス国内の香水産業で50%の収益を占めている、まさに香水の街です。この街で、少しでも香りについて感じ、学ぶために訪れました。将来自分だけの香水を作りたいという野望も。レモングラスにコリアンダー (パクチー) を合わせたり、イチジクにハイビスカスを合わせたり。まるで料理のような組み合わせも多く、香水やアロマの組み合わせからも料理が発想できるのは目から鱗でした。このころから、料理と香りの関係性を本格的に考え始める事に。
▲ les parfums regroupes en familles olfactives (香りをグループで分け、体系的に捉える為の図) 調香師の頭の中にはこれ以上の香りの知識が詰まっている
更に帰国して直ぐに、アロマティーという自分で生みだした飲み物を商品化するプロジェクトが立ち上がり、より香りの世界に僕は引き込まれました。
香水と料理。何の接点もなさそうなこの2つがフランスで僕を繋ぎ、今の自分の料理感を作ってくれました。香水が作り出す香りのメロディーは、料理にも通ずるものがあります。味わいと風味が生み出すハーモニーは、これまでの食体験をきっと変えてくれるでしょう。
▲ 僕が初めて作った香りを意識した料理。ブロッコリーとグレープフルーツとディルのお皿
料理にも飲み物にも欠かせない香り。次回はその拡げ方をもう少し深くお話ししていきましょう。
- TIRPSE Chef
田村 浩二 / Koji Tamura
Tirpseシェフ、.science Inc.CDO、L'odoriter代表。1985年生まれ、神奈川県出身。高校まで野球に打ち込むが、親友へ作ったケーキがキッカケで料理の道へ。東京で10年、フランスで1年働いたのち帰国。 シェフとして2017年にworld50best Discovery series Asia選出。2018年版ゴーエミヨの期待の若手シェフ賞受賞。 2017年に.science株式会社を立ち上げ、FOOD VISIONNINGをテーマに活動。香りを用いたプロダクト『L'aromatisane』をプロデュース。
https://mobile.twitter.com/tam30929
https://foodvisioning.science/