食の学び舎「foodskole」授業体験レポート vol.10
それはゴミ?資源?
まずはじめに。
こんにちは。食の学び舎「foodskole(フードスコーレ)」で校長をしています平井巧です。
foodskoleでは、2021年4月から「21年度前期Basicカリキュラム」がスタート。社会人から大学生、年齢も立場もバラバラな方たちが、9月までの半年間、全12回の授業を通して一緒に食について学び合います。
食を文化として学び、食にまつわるモノ・概念を持論で創造し、生きる力を持つ。これを「食の創造論」として、foodskoleのテーマに置いています。
foodskoleの授業の中で、ゲスト講師に教えてもらったこと、受講生のみんなで話し合われたこと、気づかされた視点は毎回たくさんあります。これをレポートとして形に残すことは、後々の振り返りとしてきっと役立つはず。
何よりfoodskoleの中にいる自分たちだけでなく、食のことが好きなたくさんの人たちに、このことをおしみなく共有したい。そんなことを思いましたので、いま受講している方に、授業の「体験レポート」を書いてもらっています。
過去レポートはこちらから
1回目: まずは循環のはなし。世界のこと。
2回目: 発酵でつなぐ都市と地域。
3回目: 市場、ポケマルとスーパーの違い。
4回目: 野菜は誰かが運んでいる。
5回目:見える畜産。
6回目:食材の始末を考えて料理をするということ。
7回目:なぜ料理をするんだろう?
8回目:なぜ料理をするんだろう? 2回目
9回目:食べ物とウンコの話
foodskoleで学ぶ自分たちがそうであるように、これを読まれた方たちにも、「食」の向き合い方に良い変容が起きることを期待して。これからこの授業体験レポートをお届けしていきたいと思います。
foodskole 公式サイトは、こちらをご覧ください。
第9回目の授業は「それはごみ?資源?」をテーマにレコテック株式会社代表の野崎衛さんをゲスト講師にお招きしました。
今回の体験レポート担当は、foodskole生の狩野美月さんです。(foodskole校長/平井巧)
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フードスコーレ受講生の狩野美月と申します。
第10回目の今回は「それはごみか、資源か」というテーマをもとに講義が行われました。
講師はレコテック株式会社の野崎衛さん。
レコテック株式会社はテクノロジーを最大限活用し、資源循環の実現を目指している企業です。
生活をしていて何気なく出るごみと向き合う時間となりました。
ごみとは何か
講義は「それはなぜごみと言えるのか」を話し合うところから始まりました。
受講生からは「調理中にフライパンから床に落ちてしまった野菜を5秒以内で拾えたらOK」との意見や「落ちたのがコンロの上だったらセーフなのか」などの意見が上がりました。また「自分の目の前からなくしたいものがごみ、資源ごみは自分にとってはごみだけど社会では資源」という意見もありました。
みなさんはどうですか?
私はごみの定義がはっきりしていない分、ごみだと思うのは人それぞれということを感じました。
では、ここからごみの体系をみていきます!
野崎さん廃棄物の全体像‐ごみの種類の内訳を一部抜粋
産業廃棄物と一般廃棄物の大きな違いとしては処理責任や処理方法が異なっています。
産業廃棄物はごみを排出した事業者に処理責任があります。一方で私たちにも身近である一般廃棄物は市町村ごとで処理をしています。
ごみの分類は思っていたよりも多くあり、私たちに身近である一般ごみ粗大ごみ以外にも細かくごみが分けられていることに気が付きました。
次に日本の一般廃棄物量を調べてみました。
日本のごみ総排出量は4274万トン(令和元年度)でした。これを国民一人当たりの量にすると私たちは一日918gのごみを出しています。
この量を聞いて多いと思いましたか?少ないと思いましたか?
私は正直、多いと感じました。1ヵ月で考えると一人当たり約28kgになります。
一般ごみを出すときはそれほどの量を出しているとは感じないのですが、私の見えないところや、知らないところで大量のごみが発生していると感じました。
野崎さんは「誰にとってごみなのか、ごみではないのかは時間軸の問題、ニーズの問題が関わってくる」とおっしゃっていました。
DAY9の内容にあったうんこもその一つです。うんこは昔、肥料として使われていましたが、現在はごみとして扱われています。
野崎さんがおっしゃった言葉の通りで、ごみかどうかは時間軸とニーズが関わっているというのがDAY9でも学んだうんこを例に考えるとよく分かりました。
食品ロスの状況
昨今、メディアでも多く取り上げられるようになった食品ロスですが、日本では年間600万トン(平成30年度推計値)が食品ロス量として排出されています。そのうち事業系食品ロス量は324万トン、家庭系食品ロス量は276万トンとなっています。
ここで注目したいのが、家庭系食品ロスです。
内訳としては食べ残しが123万トン、直接廃棄が96万トン、過剰除去が57万トンとなっています。
私自身これほどの食品ロスが一般家庭から出でいることに驚きました。
野崎さんはこの問題を解決するには「ごみ廃棄を有料化していくのが一番手っ取り早い!」とおっしゃっていました。
個人的に感じたのは直接廃棄が想像以上に多く、お金で買っている食材を手付かずのままごみとして捨ててしまうのは贅沢すぎると感じてしまいました。
国や自治体がいくら呼び掛けたり、様々な対策をしていても「もったいない」と感じるのは消費者の価値観です。実際にもったいないと感じていながらも捨ててしまう人が多いのではないかと思いました。
私はお金でない何かでこの食品ロス問題は向き合っていかなければいけないと感じています。そうなると、食品ロスの一番大きな解決口としては「教育」だと感じました。
リサイクルをすること
みなさんは一般廃棄物がどのくらいリサイクルされているか知っていますか?
私が住んでいる地域では週に1回資源ごみの日があるのですが、毎回「カン」「ビン」「ペットボトル」「段ボール」「雑誌類」「新聞紙」が回収されます。
みなさんも資源ごみを出す日に合わせてごみを分別していますよね。
一般廃棄物全体で見るとリサイクルされているのはわずか20.2%。
残りの79.8%は焼却されています。
世界の焼却施設の70%が日本に集まっていると言われるほど日本は焼却大国のようです。
焼却と聞くとダイオキシンなどの問題が浮かぶと思います。
私も「そんなに焼却されていたら、環境に悪いのでは?」と疑問に思いました。
野崎さん曰く、日本の焼却炉は非常に高性能であるため、焼却そのものが悪いわけではないそうです。世界と比べると日本は埋め立てが少なく、逆に高性能な焼却炉を作ってしまうとそれに依存してしまい、リサイクルが進まなくなってしまう可能性があることの方が問題だと野崎さんはお話ししていました。
そんなリサイクルもいいことだらけではないようです。
一般ごみの内訳をみてみると、容積比ではプラスチックの割合が多く、重量比だと生ごみの割合が多くなっています。特に生ごみの約7割が水。水が廃棄物となっているのが現状です。
野崎さんの話によると水を燃やすのはとてもエネルギー効率が悪いそうです。一番はプラスチックと生ごみを一緒に燃やすのが効率が良いとされているようですが、近年はプラスチックが積極的にリサイクルされ、また2022年4月から「プラスチック資源循環促進法」が施行されます。
そうなると生ごみを燃やすためには助燃材を必要とするため、野崎さんはプラスチックをリサイクルしてもあまり変わらないのではないかとおっしゃっていました。
プラスチックのリサイクルが海洋問題に役に立っていても、CO₂を考えた場合はどうなのでしょうか。野崎さんは「プラスチックをリサイクルする」「生ごみをリサイクルする(焼却しない)」この2つの問題に立ち向かっていかなければならないとお話ししていました。
生ごみをリサイクルする方法としては3つあります。
1つ目は飼料化です。有機性廃棄物(野菜のかすや魚、肉などの不要物)を乾燥飼料や発酵飼料にすることができます。
2つ目は堆肥化です。有機性廃棄物を土壌にすることで堆肥にすることができます。
3つ目はエネルギー化です。無酸素で発酵し、バイオガスを生成(メタン発酵)し発電に利用することができます。残りかすは有機肥料として利用することが可能です。
この生ごみのエネルギー化はドイツが最も進んでいます。ドイツはメタンガス先進国と呼ばれ3000か所以上の施設があります。事業主はほぼ農家で、近くに作物を育てているため有機肥料を利用して育てています。
日本でもこのような施設が増えていけばいいと思うのですが、日本の農家の問題でもある低収入という点や農家不足という点が、あまり日本では進まない理由なのではないかと私は感じました。
資源について
これまでの話を経て、野崎さんは「焼却炉がいい、リサイクルがいい、という考えではなく全体のバランスをみることが重要」とおっしゃっていました。
野崎さんが今後考える改善方法としては、「地産地消」「目に見える循環づくり」「ハウス栽培」を行っていくことだそうです。
この話を聞いて、DAY1で勉強した内容に重なる部分があると思いました。食に限らず、ごみにおいても「環境循環」が大切なキーワードだと思います。
食と同様、プラスチックの原料にも化石燃料という地球の資源が使われており、この資源を将来失わないように繰り返し使い、資源を取りすぎないことが重要です。
私個人の感想としては、リサイクルがいい、焼却がダメという考えを持つのではなく、その先の環境問題を見据えた行動を今、していくことが大切だと感じました。
食品ロスに関しては、もったいないという気持ちだけではなく、食品を捨てた先には何があるのか考えてみるだけで自分の行動が変わっていくと思います。
今回は食とは少し離れたごみの話でしたが、中を覗いてみると食と深く関わりのある分野で、とても興味深い講義でした!
- Food Producer
平井 巧 / Satoshi Hirai
foodskole校長/株式会社honshoku代表/一般社団法人フードサルベージ代表理事 1979年東京都生まれ。新潟大学理学部卒業。広告代理店での企画営業を経て独立。「サルベージ・パーティ®︎」を中心に企業・行政のfoodloss&waste にまつわる課題解決を手がける一般社団法人フードサルベージを設立。食のクリエイティブチーム株式会社honshokuでは、「食卓に愉快な風を。」をキーワードに、食にまつわるコンテンツ運営、クリエイティブ制作、プロデュース等を行う。2020年より食の学び舎「foodskole(フードスコーレ)」を開校。 https://www.honshoku.com/
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