エディターズノート
「RiCE」第22号「ピザ」特集に寄せて
2022年2月に隔月刊化してからの第2弾、通算第22号(なんかゾロ目ですね)となるRiCEはピザの特集です。ピザを取り上げるのは初めてになりますが、いつかやってみたいと思ってきました。だってピザって不思議じゃないですか? これだけ世界中で普遍的に愛されるポップな食べ物なのに、それに比べてあまり顧みられることが少ない気がします。少なくともここ日本では。
そもそもピザとピッツァ、どっちの言い方が正しいのでしょうか? 答えはどっちもあり。イタリア語でも英語でも”PIZZA”と書き、発音はピッツァに近い。だけど、まさにこの辺りにピザ/ピッツァの二重性があり、ぽんやり解像度を低くしている要因がある気がします。
ピザには、ナポリのストリートで生まれて人気が広がり、海を渡って移住したイタリア系アメリカ人によって爆発的に広がったという歴史的な経緯があります。それによって二つの系統へときっぱり別れました。ここでは、ナポリの伝統を引き継いだピッツェリアの職人による窯焼きのものを「ピッツァ」と呼び、もう一方の、ドミノピザをはじめとするデリバリーやNYスタイルのスライスを温め直して食べるものを「ピザ」と呼び分けることにします。特集内でもその方針に従ってそれぞれのページを分けていますが、あえて厳密な表記統一はしていません。なぜなら、どっちも正解であり、そのグラデーションの中にこそ多面性と豊かさがあるような気がするから。僕自身、今回の取材を通していろんなピザを食べましたが、どれもこれもが美味しくて。伝統的なナポリピッツァもNYスタイルのスライスピザもどっちも好き。
そして実際のところ、日本のピザのレベルは近年上昇の一途を辿っており、世界的にみてもめちゃくちゃ美味しい状況に。[PIZZA SLICE]に代表されるNYスタイルのピザスタンドも増えていますが、本場顔負けのナポリピッツァを出すピッツェリアも沢山あって、もう食べなきゃ損といってもいいレベル。もちろん知ってる人は知っていて、だからこそ人気の店はいつも行列が絶えない。そうした現場レベルと一般的認識との間に大きなギャップがあるのが今の日本のピザ状況と言えるのかもしれません。
本特集を読んでもらえれば、一気にその落差を埋めつつ、ピザに対する認識の解像度が高まるはず。そしてアメリカ映画に頻繁に登場するように、ピザはライフスタイルでありカルチャーでもある。そうした側面にも光を当てました。
話は変わりますが、これを書いている時点でまたしても世界は大変な状況に突入しました。コロナの次は戦争です。自分は常々、食こそが世界を繋ぎ、平和をもたらすキーファクターであると確信してきました。ピザは世界中の人を笑顔に変える具体的な力を持っています。焼き立てのピザをシェアするとき、人はきっと幸せのピースを受け取っているはず。世界中が早く笑顔で平和な日々を迎えられますように。ピースマークを送ります。
RiCE編集長 稲田浩
- RiCE.press Editor in Chief
稲田 浩 / Hiroshi Inada
「RiCE」「RiCE.press」編集長。ライスプレス代表。
ロッキング・オンでの勤続10年を経て、2004年ファッションカルチャー誌「EYESCREAM」を創刊。2016年4月、12周年記念号をもって「EYESCREAM」編集長を退任、ライスプレス株式会社を設立。同年10月にフードカルチャー誌「RiCE」を創刊。2018年1月よりウェブメディア「RiCE.press」をロンチ。
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