ONE MORE RiCE
おいしい魚を食べ続けるために出来ること
これからの魚について考えよう
ブルータスの最新号の特集が「おいしい魚が食べたくて。」
RiCEの昨年発売された第2号「おいしい魚」特集を作った身としては思わず二度見してしまいましたが、まあ鯛の尾頭付きなんてものはお魚の代表格ですからね。ただ一応やっぱり、並べてみたいという衝動に駆られて撮影しました。鯛だけに? 他意はございません。
なんて駄洒落を言ってる場合ではまったくなく。ぼくらの大好きな「おいしい魚」が今、危機に瀕しています。その意味で、ブルータスの特集で一等重要なページは、P98-99の勝川俊雄 (東京海洋大学准教授) さんと岸田周三 ([レストラン カンテサンス]シェフ) さんの対談「魚が小さくなっている?」だと思うのです。
RiCEの特集でも、勝川教授に「日本の魚の危機—おいしい魚をずっと食べるために私たちができること」というエッセイを執筆いただき、近年の漁獲量の減少を明示する複数のグラフとともに掲載しています。
また特別鼎談「これからの魚を考える」では野本良平 (「羽田市場」代表) 、生田よしかつ (「鈴与」三代目) 、鈴木允 (「MSC」漁業担当マネージャー) という立場の異なる三氏から「おいしい魚を食べ続けるために」というテーマについて語り合ってもらっており、かなり画期的なテキストになっています。今からでも是非ご一読いただければ幸いです。
サステナブルシーフードを食べて考える
さて回り道をしましたが、先日MSC認証取得サステナブルシーフード料理試食会に行ってきました。
本イベントは、MSC20周年グローバルアンバサダーとして世界中でサステナブルシーフードの啓蒙活動を行うオランダ人シェフ、バート・ファン・オルフェン (Bart van Olphen) 氏と、日本でサステナブルシーフードの普及活動を行うシェフグループChefs for the Blueが協働する試食会です。
▲ (左から) 森枝氏、バート氏、室田氏
MSCってなんですか?
という質問に答えますと、Marine Stewardship Council (海洋管理協議会) の略。減少傾向にある世界の水産資源の回復を目指し、1997年に設立された国際的な非営利団体 (NPO) です。ロンドンを拠点に世界5大陸に事務所があり、日本事務所は2007年より開設。認証制度と「海のエコラベル」を通じて持続可能な漁業の普及に取り組んでいます。
そしてChefs for the Blueって?
という方にお答えすると、日本の水産資源の減少を食い止めるべく、東京のトップシェフ30人が集まり結成されたNPO。ただでさえ忙しいシェフたちの熱意とその地道な活動を評価され、先頃国際的なプロジェクトコンペティション「Co-Lab」で見事優勝をかっさらうという快挙を成し遂げました。会の世話人であるライターの佐々木ひろこさんによる尽力も大きかったようです。
▲ 右端は特別ゲストの明豊漁業株式会社(MSC認証取得)の松永社長。料理の素材としてカツオやビンナガを提供
イベントの開催場所は、RiCE PEOPLEのメンバーである野村友里さんがオーナーシェフを務める[eatrip]。料理の腕をふるうのは、友里さんやバート氏はもちろん、今年のミシュランで一つ星を取った渋谷のフランス料理店[ラチュレ]のオーナーシェフ室田拓人氏、さらに本サイト副編である[サーモンアンドトラウト]の森枝幹くんなので、そりゃ行くでしょうという感じなのですが。ちなみに彼ら日本人シェフ3人はいずれもChefs for the Blueのメンバーです。 (RiCE PEOPLEのメンバーでは他に[TIRPSE]の田村シェフもそうで、かなり熱心に活動をされています)
▲ オールスターキャストな料理風景
当日のメニューはこちら
春のカツオのタルタル トスターダとともに (森枝幹シェフ)
▲ カツオをセビーチェ (魚介と野菜のマリネ) 状態にした前菜。カツオの淡白な味わいを生かしている
春の野菜のバターミルクの温かいサラダ
▲ MSC食材は不使用の、コース合間の野菜料理。バターミルクが効いている
ビンナガのグリル ニソワーズ風 (バート・ファン・オルフェンシェフ)
▲ フレンチスタイルのメイン。ステーキのような焼き目をつけたビンナガが他の具材ともぴったり
ビンナガの赤ワイン煮 プランタニエール (室田拓人シェフ)
▲ 赤ワインのソースでいただくこちらもメイン。濃厚な美味しさでビンナガの旨味が味わえる
パッションフルーツとイチゴのパブロヴァ (野村友里シェフ)
▲ 千葉の房総半島産のパッションフルーツを使った一品。酸味と甘みのバランスが絶妙
試食会の最後には4人のシェフが登壇し、トークセッションを行ってそれぞれの立場から日々感じている想い、水産物のサステナビリティに関する考えを語り合うという、とても有意義な時間でした。
▲ 影響力のある日本のこれからに期待をかけたいと語るバート氏。もはや日常化したオーガニックフード同様、サステナブルシーフードについても未来を信じたいと野村友里さん
話はずれますが、ラーメン特集でご一緒したDAOKOちゃん主催のイベント「チャームポイント」に行ってきました。どのライブも素晴らしく得るものが大きい一夜でしたが、まったく前知識なく見たSUSHIBOYSにやられました。センスの塊。
▲ 軽自動車 / SUSHIBOYS
寿司ネタや魚ネタが特にあるわけでもないのですが。でも、こんな未来しか感じさせない若者たちの表現に触れたりすると、日本の将来にもかすかな期待を抱いてしまうのです。
これからも「おいしい魚」を食べ続けられるために。RiCEでも地道にアクションを起こしていければと思っています。
- RiCE.press Editor in Chief
稲田 浩 / Hiroshi Inada
「RiCE」「RiCE.press」編集長。ライスプレス代表。
ロッキング・オンでの勤続10年を経て、2004年ファッションカルチャー誌「EYESCREAM」を創刊。2016年4月、12周年記念号をもって「EYESCREAM」編集長を退任、ライスプレス株式会社を設立。同年10月にフードカルチャー誌「RiCE」を創刊。2018年1月よりウェブメディア「RiCE.press」をロンチ。