『RiCE No.24』表紙巻頭・拡大版
夏帆とナチュラルワイン、昼下がりの幡ヶ谷デート。
8月5日発売のRiCE No.24 SEPTEMBER 2022「特集 ナチュール新世代によるワインライフ」の表紙巻頭には、俳優の夏帆さんが登場。
RiCE.pressでは、誌面には載せきれなかった夏帆さんとナチュラルワインとの関わり方や、9月1日に出演映画『さかなのこ』が公開された夏帆さんに俳優という職業に対する想いなどを、石田真澄さん撮影カットとともにお届けします。
——今日は幡ヶ谷でのワインホッピングということで、色々なお店を回っていただきました。この辺りに馴染みはありますか?
ここ最近、素敵なお店が増えてずっと気になっていました。お休みの日にフラッとお昼や夕方あたりから飲むってなると気持ちいいだろうなと。すごく豊かな休日を送っている感じがしますよね。
——今日飲んでいただいた中で気に入ったものはありましたか?
いつもは白ワインを飲むことが多いんです。でも今日、赤も飲ませてもらって、軽めの赤って美味しいなと。ずっしりした赤ワインも美味しいですが、どちらかというとお肉料理に合わせたり、もうちょっと深い時間にしっとり飲むイメージで。昼から飲むには赤はちょっと重いのかもって思っていたんですけど、軽やかな赤はこの時間帯から飲めて気持ちいい。むしろスイスイ飲んじゃって危ないかも。
[wineshop flow]ではピュアで優しい味わいのレ・グランド・ヴィーニュ「ピノ・ドニス」を、[Cyôdo]では華やかな香りのレ・ヴィーニュ・ドゥ・ガイア「チン・ア・ジャネット 2020」を飲み干し・・・。
——確かに、飲みやすいですよね。
あと、ワインって知識がないといけないのかなって勝手に思っていたんです。だけど[flow]の店主の方と話していると、別にそういうわけでもなく、本当に楽しんで飲むのが一番だって気付かされました。でも奥深いし、深掘りしたくなる気持ちもすごくわかります。飲みながら知識が増えていくのが楽しいです。
——アナログレコードを楽しむのと感覚的に似ていますよね。
そうそう。[àcôté]の店主さんもおっしゃっていましたが、エチケットが自分の好みに合うとそのワインを造っている方と感性も合うという。そういう出会いがあるのは、面白いなって。
[àcôté]ではお持ち帰り用のワインが販売されている。ラベルやボトルの形、そして店主のお話などから想像を膨らませていくとどれも欲しくなってしまう。夏帆さんが指差しているのはドメーヌ・ブランド「シュマン・デュ・リムルン マセラシオン 2020」
——コロナ以降、家でワインを買って飲むことも増えました?
増えましたね。友達のお家に遊びにいくときにワインを持っていったりもします。それ以前は、家で焼酎や日本酒を飲むことが多かったのですが、やっとワインに辿り着いた。ワインがあると生活を豊かに彩ってくれる感じがしますよね。一人で映画を観るときとか、友達とわいわい集まるときとか。そう思うとワインってすごく懐が広い。こうやって、昼間に散歩しながら飲むのも楽しいし、夜にバーで飲むのもいいですしね。
最後に立ち寄った[山田ワイン]にて。ピエール·フリック「ピノグリ マセラシオン 2019」でほろよい加減。
——このコロナを含んだ3年間で、色々変わりましたよね。そして気がついたら写真集『おとととい』が一冊出来ていましたね。
20代の自分を写真集として残しておきたかったんです。そこで写真を(石田)真澄ちゃんにお願いさせてもらって。それこそ最初に『RiCE』でご一緒させてもらったことがきっかけです。真澄ちゃんって、ふわっと写真を撮るんですよ。私すごく写真(を撮られるの)が苦手なんですけど、気負わずいられるというか。それに、今まではどちらかと言うと自分よりも年上の方とお仕事をすることが多かったんです。でも年齢を重ねていくうちに、これからの世代の方とも何か作品を作れたら楽しいかもしれないと思って、お願いさせてもらいました。
——『RiCE』での撮影は4年前でしたね。
じゃあ、27歳とかだ。(当時の誌面を見て)これがすごく好きだったんです。懐かしい。『RiCE』さんのおかげで写真集ができました。ありがとうございます。
RiCE No.09 AUTUMN 2018 特集『牛肉の未来』より
——いやいや、こちらこそありがとうございます。このとき「No.9」だった雑誌も、今回で「No.24」になりました。
うわぁ! もう24号か。
——そして9月1日(木)公開の映画『さかなのこ』、とても面白かったですね。主役を務めるのんさんが、さかなクンにしか見えなくなってきて。夏帆さんの役は原作にはないけれど、あの存在があることで不思議な揺れが生まれてくる感じがしました。
そうですよね。他のシーンとは少しだけトーンが違っていて。最初本読みに行った時に、「男か女かはどっちでもいい」っていう言葉がホワイトボードにバン!と貼ってありました。それまで台本を読んでいて、どんな風にミー坊と向き合ったらいいのだろうと色々と考えていたのですが、(ホワイトボードを見て)より方向性が明確になったというか。私とミー坊との関係というのも、見ている人がどう捉えるかであり、それは自由でいい。もしかしたらちょっとしたラブストーリーなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。それが私の中ですごく面白かったです。
『さかなのこ』全国公開中/配給:東京テアトル/©️ 2022 「さかなのこ」製作委員会
——そうですね。映画の中でも、ミー坊は、変わった人といえば変わった人じゃないですか。でもそれでいいじゃんと。みんなそれぞれ色々あるんだけれど、それでいいのだと全肯定してくれるようでした。
そんな映画でしたね。みんなミー坊の魚が好きっていう想いを、自分なりに、ちゃんと尊重して大切に思ってるのが微笑ましいですよね。私が演じた、モモコっていう役もそうですし。
『さかなのこ』全国公開中/配給:東京テアトル/©️ 2022 「さかなのこ」製作委員会
——そうですね。そして今度は夏帆さん出演の舞台(『阿修羅のごとく』東京公演9月9日~10月2日、兵庫公演10月8日~10日)も始まりますね。
色々悩み、模索しながらやっています。
——一回一回シチュエーションや求められるものも違うから、また違った悩みになるんでしょうか。
もちろん経験値は増えていくので、ある程度のことは対応できるようになってくるんですけど、それでも現場が変わると、仕事をする人も演じる役柄も違う。舞台だったり、映画だったり、ドラマだったりフィールドが変わると、毎回またゼロから積み上げていく感覚があります。
——それぞれのルールみたいなところもあるだろうし。
そうですね。やっていることは一緒ですが、アプローチの仕方が現場毎にちょっとずつ違うというか。だからこそ、面白いとも思うんです。例えば同じ監督や、同じ共演者になっても、スタッフまで全く同じということはないから。色んな出会いがあるし、刹那的な感じもこの仕事の魅力だと思います。終わるとすっごく寂しいんですけど、次の現場に行くと別の世界に入るというか。そして作品は残っていく。その繰り返しが面白いなと思いますね。
——一番面白いと感じるところはどこですか?
人と何かものを作るってやっぱり楽しい作業だなって。その間に色々なコミュニケーションがあって、それで出来上がったものを観てくださる方が楽しんでくれたら、それはすごく幸せ。中毒性のある仕事なんだろうなと思います。お芝居をしていて、快感を感じたり夢みたいに思える瞬間があって、それを経験しちゃうと、なんか辞められないんです。本当にしんどくてもう辞めてやるってなるときもありますけどね(笑)
——オンオフがすごく大事な仕事だなっていう感じがしますね。夏帆さんはオフを大事にしてるんでしょうか?
休みも大事ですよね。基本怠け者なので、ダラダラしてます。そしてお酒を飲んでるとすごくオフな感じになります。だから今、インタビューされているのに、オフっぽい気持ちになっちゃってますもん(笑)。お酒はやっぱり、少し気持ちがゆるくなるというか、時間を彩ってくれるものですね。
夏帆
1991年、東京生まれ。2003年、スカウトをきっかけにデビュー。2007年公開された『天然コケッコー』で主演を務め、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞、第32回報知映画賞の新人賞ほか多数の映画賞に輝く。以降は、映画『海街diary』『ブルーアワーにぶっ飛ばす』『Red』『MOTHER マザー』や、ドラマ『架空OL日記』『予兆 散歩する侵略者』『喜劇 愛妻物語』など話題作に多数出演。最新出演作『さかなのこ』が9月1日より公開。9月9日からは舞台「阿修羅のごとく」に出演。石田真澄撮影による写真集『おとととい』が発売中。Photography by Masumi Ishida
Styling by Natsuko Kaneko
Hair & make-up by Hiroko Ishikawa
Interview by Hiroshi Inada|Text by Mika Kobayashi
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