「おいしいユリイカの旅」有田

陶芸家・豊増一雄さんの器


Harumi FukudaHarumi Fukuda  / Sep 24, 2024

RiCEで連載していた「おいしいユリイカ」は、ウェブ版になってから、より自由度をもって、おいしいお皿たち、その周辺の作り手たちも含めて、お届けしております。

先日、佐賀県有田在住の陶芸家・豊増一雄さんの工房に、数年ぶりにお邪魔しました。私は豊増さんの作品を象徴する白磁や青磁の茶器に魅せられて、ゆっくりと豊増作品を集めています。今回は数年ぶりに有田の工房にお邪魔しました。

豊増さんは、お父様が中国在留孤児の方で、ご自分が10歳のころまで中国に住んでいて、その後、日本に家族で戻って来られ、福岡の八女などに住んでから、有田にやってきたという。そのお父様の経歴も興味深く、中国国営の仏像の陶器のオーナメントの原型を作られるお仕事をされていたそう。豊増さんも陶工や工員たちの作る作業現場を見ながら暮らされていたそうで、子供の頃から遊び道具は粘土だったと昔の話をしてくださった。

そういう小さい頃の原風景もあった経緯から、豊増さんの器は、蓮があったりとどこか仏教的なモチーフ、それに繊細さも備わった独特な世界観を醸し出されている印象であります。

私が豊増さんを知ったのは5、6年くらい前、中国茶に興味を持ち出したころ。展示で一目惚れした茶壷チャフー(日本茶でいう急須)を譲っていただき、愛用させていただいていた。以前違う雑誌で陶芸の連載をさせていただいていた時に、唐津や有田の陶芸家さんを巡る機会があり、やっと豊増さんの工房にお邪魔できた。

その時もそうでしたが、今回もおいしい台湾的なデザートと中国茶を振る舞ってくださいました。目の前で豊増さんが中国茶を淹れてくださり、奥様がお作りになった中国茶に合う菓子を出してくださった。

豊増さんが作られるのは主に白磁と青磁。白磁は透き通るような美しさ。原型を作り、そこに柄を彫り、ろくろで引いた作品に絵型を押し付けて表現されていて、その様々な絵柄の美しさは素晴らしく、中国茶が好きな方ならいつか欲しいと思う茶器のひとつ。青磁は、深い押し付けのない肌地が、見つめるほどに沼に入っていくみたいに魅了してくる。豊増さんは「白磁はまだロスはないですが、青磁は本当に窯を開けるまでは、どこまで完成品になれるかわからない」と話していた。

つい先日までは代々木上原の[LEAFMANIA]で個展をされており、初日にお伺いしました。お話をお聞きすると、今ちょうど窯がいい状態なので納得できるものはある程度はできたけども、ここからまた窯がゆっくりと変わっていくので、本当にそことの向き合い方だと話してくださった。

美しい空間で見る豊増さんの作品たちにため息な個展初日の朝でした。

初日の予約は200名の応募があったとか。年々、日本の陶芸家さんの人気が高まり、並ばないと、あるいは予約を勝ち取ってやっと見れる購入できるという状況。陶芸界も進化が止まらない状況なのだろうな……。

Photo by Norio Kidera(写真 木寺紀雄)IG @noriokidera 

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