
副編集長・成田の編集雑記「半ライス」
001 私もコラムを書こうと思う&事務所引越しのお知らせ
RiCE WEBでコラムというか日記のようなものを書いてみることにした。理由はシンプルに、RiCEというメディアを最短距離で爆発させたい。その上でWEBをもっと盛り上げていきたいのだ。
僕のメインの業務は直近1~2年は雑誌の制作であり、いかにいい号を完成させるかに心血を注いできた。自分で言うのもなんだが雑誌は日に日にクオリティが上がっていると思う。しかしWEBにはあまり貢献できておらず、これだけミニマムな組織(なにせ社員4名の独立出版社である)において、自分が与えられた領域以外のことは無関心でやりませんそんなスタンスはダサすぎると思ったのだ。
たとえばお酒の特集ならば、飲んだ酒の量だけいい号になる(と信じている)。6月売りはカレー特集なので毎日のようにカレーを食べまくっている。リサーチや取材はもちろん、ランチミーティングや会食などもなるべくカレーを食べるように努めている。
こうして原稿を書くことで一人でもこのサイトを気にかけてくれる人が増えたら嬉しい。読んでほしい素晴らしい記事はたくさんあるし、クライアントになりうる企業の人であれば何かを感じてもらって一緒に仕事をしたいと思ってくれたらそんなに光栄なことはない。
対外的には食雑誌の出版社としてみられることが多いが、僕たちは制作プロダクションでもある。企業の広告や冊子、WEBサイトやSNSの制作も行なっていて大きな収益の柱だ。生命線と言ってもいい。
雑誌を一冊作ることは確かにやり甲斐がある。しかしクライアントを通じてより大きな予算を預かり、良質なアウトプットや影響力あるものを世に出していくこともこの仕事の醍醐味だ。
最近僕たちのチームで制作しているものを紹介させてもらうと、スパイスブランドGABANのInstagramは反応がいい。
このようなRiCE以外のお仕事をまとめたコーポレートサイトも制作中だ。インターンのスタッフが懸命に手を動かして作ってくれている。間も無く公開できると思う。今までこういう発信を怠っていたが速やかに変えていきたい。端的にいうと会社としてしっかり稼いでいく段階に入っている、なにせもう10期目だ。チームのみんなが健全に休み、外部のクリエイターさんもモチベーション高くやってもらえるギャラやスケジュールを整備し、さらに良い仕事を積み重ねる。そんな体制をいち早く作りたい。
コラムのタイトルの半ライスについて。これは年6回発行されている雑誌「RiCE」が完成されたフルパッケージだとしたら、あくまでその半分くらい、もしかしたら企画として成立させるには中途半端かもしれないけれど面白かったことや、取材をしていてテーマからは逸れるから掲載できない、けれど妙に心に引っかかったこと。制作の裏側で心が動いた瞬間を書き留めておきたかった。
「編集雑記」としたのは、制作が終わった後の「編集後記」ではなくて、現在進行形で起きていること、混濁した感情もリアルタイムで書きたいという気持ちからである。
以上前置きが長くなったが本題に入りたい。初回の原稿だが、お知らせも兼ねて事務所移転について書こうと思う。
ということで弊社ライスプレスですが、5月1日に、「HOME WORK VILLAGE」という施設にお引越しします。もともとは「池尻ものづくり学校」だったところでその前は「池尻中学校」だけに、体育館もあれば教室もある。なんだか久しぶりに学校へ登校するような懐かしい気分を味わっている。
ここHOME WORK VILLAGEだが、1階には飲食店が入り(このフロアのグランドオープンは7月だ、開業したら乾杯しましょう)、2階3階にはいくつかの企業が入居予定、2階には「みどり荘」もありユニークな個人事業主の方々が集まりそう…。と既に面白い場所になりそうな気配が漂っているが、その場所の面白さというのは自然発生的に、誰かにお任せしているうちに一丁上がり!で出来上がるわけではないだろう。だからスカした態度で距離を取るのではなく、むしろ積極的にこの場所に関わる、主体的にいい場所を作りあげていくという心構えでありたい。
そんなふうに感じているのも理由がある。最新号の京都特集制作時、1ヶ月ほど京都に住み込んでいて、このとき「SHIKIAMI CONCON」というコワーキングスペースを借りて仕事をさせてもらった。クリエイターたちが集まるコミューンのような場所であり、ここで過ごした時間がかなり刺激的だった。
「CONCON」は“共創自治区”というコンセプトを掲げている。共に創るという字のとおり、施設に関わっている一人一人から「この場所をもっとよくしていくのだ」という明確な意思を感じた。会社や個人という単位を超えて、「働く場所」そのものに真摯に向き合う。それは一見面倒にも思えるけれど、場の空気そのものをみんなでDIYしていく感覚で非常にエキサイティングだった。局所的に滞在した自分でさえそのうねりを肌で感じて(勝手に)触発されたのだ。
京都特集のリサーチのため京都に降り立ったまさに初日にお邪魔したのが「CONCON」だった。この場所とここで会った人たちなしには完成しなかった一冊である。“京都に潜る”という趣旨の「DIVE into KYOTO」という企画の頭が実際ここだ。京都特集、めちゃくちゃいいのでぜひ書店でお求めください。内容はこんな感じ。
だから京都特集は雑誌を作る以上に、“働く場所と自分の関係性を見つめ直す時間”でもあった。これらを踏まえつつ、今回新しい施設に編集部のお引越しだ。願ってもないタイミングだけに真剣に向き合いたい。RiCEを爆発させることと同じ以上に、ここHOME WORK VILLAGEにも積極的に関わっていきたい。
話は変わるが改めてちゃんと写真を勉強しなきゃと思い、後藤繁雄氏の「現代写真とは何か」を数日前から読んでいる。
引越し中のオフィスにて。「RiCEの写真いいね」と言ってもらえるのはとても嬉しい。でもそこに甘えずクオリティをもっと高めていきたい。写真家さんと仕事するにしても写真への理解があるのかないのかで大違いだと思っている。ということでもっと前に読んでおくべきだった、と反省しながら読み進めている。
本の中でアメリカの写真家・スティーブン・ショアのインタビューへの言及があり、とても印象的だったので引用させてもらう。
ショアといえばアンディ・ウォーホルのファクトリー(彼のアトリエであり様々な人々が集まり、芸術、音楽、映画など様々な活動が繰り広げられていた場所)に10代の頃から出入りしていたことで知られるが、そんな彼がウォーホルについてこう語っている。
「アンディは、遠慮なくオープンに周りの人に喋りかけた。色はこれでいいかな? 牛の頭の大きさは、これでいい? もうちょっと小さい方がいいかな? 彼の周りにできた渦のエネルギーを彼は作品に使ってたんだ」 (『現代写真とは何だろう』 P.49)
太字にしたところが読んでいて刺さった部分である。例えが飛躍しすぎておこがましすぎるが言葉を選ばずに言うと、ウォーホルのごとく集まった人の意見を聞きつつ素晴らしいアウトプットを連発したい。自分の頭で考えられることには限度があるから、周囲にいる個性豊かな人たちに何度も批判されまくって叩かれて、より強度のある企画を世に放ちたい。だからこそ「HOME WORK VILLAGE」にユニークな人が集まって面白い事象が同時多発的に立ち上がる。そんな渦みたいな場所になれば最高だ。
詰まるところオフィス環境が優れているとか居心地がいいというのも大切だが、それ以上に場のエネルギーと相乗していきたいし、同時にそのエネルギーの一部でありたい。今回の引越しに対して僕はそんなふうに感じている。いつでも遊びに来てください。
- Associate Editor of RiCE
成田 峻平 / Shunpei Narita
『RiCE』副編集長。1997年宮城県仙台市生まれ。Media Surf Communicationsを経て、ライスプレス入社。
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