日本人のカレー作りを変えるかもしれないパズル
SPICE PAZZLE by SPICE CRAFT WORKS
ミックススパイスを自分の配合で作りたい。でも、何種類のスパイスが必要なのか。何をどのくらいの割合で混ぜたらいいのか。組み合わせが多いだけに、ミックススパイスの大海原に漕ぎ出すことを躊躇う人は多い。
カレー研究家の水野仁輔さんはこのような疑問を解消すべく、円グラフを用いながら視覚的に解説を試みてきた。基本の3種類は、ターメリック、レッド チリ、コリアンダー。これらを小さじ1:1:6でミックスすると4人分のミックススパイスができあがる。ターメリックとレッドチリをベースとして固定すれば、残りの6/8を自由にミックスすることで、失敗のないミックスができるという指針を編み出し、過去十年に渡ってミックススパイスのお悩みを解決してきた。配合や割合を表すのに、ケーキを切り分けるように考えられる円グラフはちょうど良いものと思われた。
一方で、水野さんは円を使うことで曖昧だったり拾いきれなかったりする部分があると長年感じていた。6/8の自由な部分は実際にはどうするのがいいのか。スパイスの数が増えて、どんどん小さく切り分けた部分の面積が分かりづらくないか。小さじ1のレッドチリを辛いと感じる人も多いのではないか。そこで思いついたのが、正方形を半分また半分と割っていくことだった。円から正方形。一見単純に思えるが、水野さんは「大変なことになった」とすぐに感じたという。
小さじ8のミックスを作る上で、正方形はとても優れている。半分の半分、さらにその中で半分の半分とすると、16個の正方形に分割できる。これによって、最小単位が小さじ1から2分の1まで刻めるようになった。スパイスをいざ嵌めていく時にもわかりやすい。スパイスの微調整がより細かくできるようになり、なおかつ細かく分割しても相対的な量がすぐにわかりやすくなった。正方形を使ってミックスを試してみればみるほど、これは「カレー界のノーベル賞級」だと確信は深まるばかり。ミックススパイスの経験のある人にとっては、まさに目の覚めるような発見だった。事実、この正方形の発見を教えられたスパイスクラフトワークスのメンバ ーの一人は、このことで頭がいっぱいになり、翌日に材木店で木材を切り出してもらい写真のような木のパズルを作ってきたほどだ。
積み木のようなブロックをパズル感覚で自由に嵌めていくだけで、失敗しないミックススパイスを作ることができる。発想のブレークスルーに親しみやすいフォーマットが加わったことで、スパイスパズルはまさしく、誰もが自分のミックスを楽しめるツールとなった。
各地でのワークショップを通じて、スパイスパズルの楽しさを広める活動を本格的にスタートさせたスパイスクラフトワークス。これはもしかすると、私たちのカレー作りを変えてしまう大発見なのかもしれない。
当記事はRiCE No.11「スパイスカレーの深層」の記事をWEBサイト用に再編集しています。 RiCE No.11の内容を見る。
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